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札幌聾学校裁判判決に対する声明
北海道エスペラント連盟
道立札幌聾学校にて、母語である日本手話による授業を受けられないことは教育を受ける権利を侵害しているとして児童2名が道に賠償を求めた訴訟に対して、札幌地裁は請求を棄却した。
守山修生裁判長は、棄却の理由について「日本語対応手話は、日本手話と一部の語彙を共有しており、日本語対応手話を使用すれば、日本手話を第一言語とする児童にも単語の一部を伝えることができる」、また「イラストや図、写真等のコミュニケーション手段を活用すれば、一定の水準の授業を提供することが可能」であり、「第一言語により教育を受けることが憲法26条で直ちに保障されるとは解されない」と述べた
これは授業の内容を、日本手話を母語とする子どもたちに「一部」「一定の水準」しか伝達できていないことを認めながら、その状況を子どもたちに強いることを公的に是認し開き直るという、権利の守り手にあるまじき差別的判決である。
北海道エスペラント連盟は、言語的少数者の権利を守る立場から、この判決を非難する。そして聾者・児の言語権、学習権が保障されるよう、北海道がすみやかに適切な措置をとることを要求する。
「立命館大学文学部教授 佐野愛子さんによる不当判決の解説」
【日本手話と日本語対応手話(手指日本語)について】
「日本語対応手話」は、日本語の文法に沿って表現されるため、「手指日本語」とも呼ばれています。「日本手話」は、手以外も使って表現しますが、手の動きだけでなく、NM表現(NMはNon-Manualの略。日本語では非手指表現とも呼ばれる)と呼ばれる顔や肩などの動き、眉の動き、目の開き方や視線などが重要な役割を果たします。「手指日本語(日本語対応手話)」は、基本的に手と口形のみで表現しており、日本手話の単語を借りて日本語の言語構造にあわせて表現するものです。日本手話とは異なる言語で、「手指日本語」は、日本語の変種ということもできます。
( https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2023/97273/disability から引用)
日本手話は日本に住むろう者によって話されている手話言語で、日本にろう学校が設立された1878年以降にクレオール(混成語)として誕生したと言われています。母語話者人口は約6万人程度と推測されています。おもに、ろう学校の児童コミュニティを通じて伝承されてきました。昭和40年代以降ろう学校の生徒数の減少によって伝承コミュニティの基盤がゆらいでおり、母語話者数は減少傾向にあります。地域方言はありますが、共通語がある程度形成されており、相互理解度は比較的高いと言われています。
欧米の手話言語はその歴史的経緯から系統関係が認められることが多いですが、日本手話は日本で独自に生まれたものです。なお、植民地支配時代に日本が韓国と台湾にろう学校を設立した関係で、韓国手話と台湾手話は日本手話と語彙の共通性が高く、日本手話語族とされています。手話言語は一般にその地域で話されている音声言語およびその正書法から語彙を借用するためのシステムを発達させています。指文字はその代表であり、ラテン文字借用のための指文字は広く欧米に伝播しています。日本のかな文字借用のための指文字は独自のものですが、一部にラテン指文字の借用がみられます。また、漢字使用圏では漢字借用のためのシステムも発達してますが、日本手話のそれは他の漢字圏、たとえば中国手話のものとは関係がありません。手話言語同士の言語接触については、とくに発展途上国などでは複雑な状況を生んでますが、日本手話は他の手話言語の影響をほとんど受けていません。
(http://slling.net/wp/contents/outline/ から引用)
「手指日本語(日本語対応手話)」は、口話の補助手段として日本手話の語彙や文法の一部を借用したコミュニケーション様式が存在し、非母語話者を含む場面においてリンガフランカ(共通語)として機能しているという方もいらっしゃいますが、聴者(耳が聞こえる人)は、手単語を覚えるだけで手指日本語を話せるようになりますが、ろう者については、手単語に限ればたくさん知っていますが、日本語に置き換えることができない手単語は、手指日本語では使えません。手指日本語で用いられる手単語は限定的です。(使えない部分は、)ろう者は手を動かしながら口話をします。口話は手話ではありません。日本語です。
リングブランカは、共通の母語を持たない人同志のコミュニケーションツールとして、別の言語を使うことをさすのですが、聴者の手指日本語は、自分の母語を手指で表現したものになり、リングフランカとして適切ではないと言えます。
(木村晴美 (2011) 「日本手話と日本語対応手話(手指日本語)」 生活書院 などから引用)
日本の文部科学行政では、ろう学校であれ、一般の学校であれ、学校では日本語を学ぶことを暗黙のうちに大前提としている。また小学校に入学する子どもたちは、入学前に既に音声日本語についてはこれをマスターしているという前提で指導要領が作成されている。小学校で学ぶのは、その音声日本語能力の鍛錬や書記日本語についての学習である。ろう学校でも同様に考えてられるため、一般の学校で用いられているのと同じ教科書とカリキュラムが使用されているが、そのために、耳からの音声日本語のインプットを持たないまま、ろう学校の小学部に入ってくるろうの子どもたちにとっては、最初のスタート地点から聴児の教育とは差が付けられていることになる。この差を埋めて聴児並の授業をしようと、ろう学校教員は日本語を子どもに教えるのには、日本語の一形態である手指日本語を使うことが良いことだと盲信してしまっているケースがある。しかしながら、媒介言語も持たず、授業言語についての深い考察もないままに、いきなり目標言語と同じ言語を用いて、聞こえない子どもにはバリアのある日本語で子どもたちを教えようとすることがどれほど無謀な試みであるかは、説明するまでもないであろう。日本語を母語として獲得できているわけでもない、ろう児にとっては、手指日本語は、まったくの外国語である。媒介言語でもない。少なくとも、ろうの子どもたちが出生から間もない時点でも自然言語として手指日本語をまず獲得したという報告は世界のどこにもない。彼らが親から学ぶのは、基本、自然言語であり、それは日本手話である。
子どもたちにとってもっともバリアの低い自然言語を学ぶ機会を保障するというのは、ろうの子どもたちの人権の問題である。聴児が自然に日本語に囲まれた環境で日本語を獲得するのと同じように、ろう児は日本手話を獲得できる。
( 第1章 日本手話とはどういう言語か 森壮也 「日本手話で学びたい」 (2023) p17-24 ひつじ書房 から引用 )
「ろう者の第一言語である日本手話で学習を受ける権利」を考える際には、まず以下の点を確認する必要がある。
・日本手話が日本語と全く異なる言語であること
・日本語対応手話(手話アシスト日本語)は、日本手話の代わりにならないこと。
・子どもの学習のために、早期の安定した(日本手話の)言語獲得が重要な役割を果たすこと
日本語対応手話(手話アシスト日本語)においては「言語音を時間軸に沿って連結する」日本語の本質が保たれているため、日本手話を母語・第一言語とする話者にとって円滑に理解できるものではない。日本語対応手話(手話アシスト日本語)はあくまでも日本語を母語・第一言語とする話者に最適な補助コミュニケーション手段である。
( 第2章 ろう児の発達における日本手話の重要性 松岡和美 「日本手話で学びたい」 (2023) p25 ひつじ書房 から引用 )
「日本手話」と「日本語対応手話」は、ひとことでいうと「語彙の一部が共有された別言語」である。すなわち、両言語間のコミュニケーションは、単語を用いて「何について話をしているかを伝えることができるレベル」に限定されており、「何がどうなっているか」を伝えることができない。「日本手話」と「日本語対応手話」では、文法体系が全く異なる。「日本手話」は視覚による情報伝達を効果的に行う文法体系であるのに対し、「日本語対応手話」は音声日本語の文法に従っており、耳で聞いた場合に効果的な文法体系になっている。
当事者団体である全日本ろうあ連盟が「日本手話」と「日本語対応手話」を区別しないという立場であることはよく知られている。これまで聴覚障がい者やろう者が社会的に差別されてきた背景を考えると、全日本ろうあ連盟の意図するところは、「使う手話の習得度や種類によって手話話者が社会的に区別(差別)されるべきでない」、という主張であると、著者は解釈している。使う種類によって、聴覚障がい者の中で差別や分断が起きるべきでないという切実な想いが全日本ろうあ連盟の主張には込められていると、筆者は理解しており、その想いには大いに共感するところだ。ただしこのことは文化的・社会的な問題としてとらえるべきものであり、言語の実態とは切り離して考えなければ、「日本手話」と「日本語対応手話」のどちらかが排除されてしまい、結果として聴覚障がい者の間での分断を生みかねないと危惧している。
( 第3章 日本手話と日本語対応手話の特徴と違い 菊澤律子 「日本手話で学びたい」 (2023) p51-52, p56 ひつじ書房 から引用 )
[Derivaj verboj de la aina lingvo (アイヌ語の派生動詞)]
これは、2021年1月にご逝去された切替英雄さんが、1987年に「Derivaj verboj de la aina lingvo (アイヌ語の派生動詞)」というエスペラントでお書きになったアイヌ語文法の記事です。
今まで、あまり知られてきたものではなかったですが、アイヌ語の文法をエスペラントを通じて、世界に広く知らせたいという趣旨を、ご家族の方にご理解いただいて掲載する運びとなりました。
なお、内容については、HEL(担当:横山裕之)が責任を持つということで、ご了解いただいておりますので、よろしくお願いします。
日本エスペラント協会(JEI)の点字データ保管庫への点訳投稿文の収録
2020年6月号から、JEIの機関誌に、「アイヌの人々と(3 言語版) Kun la ajnuoj (en 3 lingvoj)」の連載をしていますが、それらを抜粋し点字ファイルにしたものを、日本エスペラント協会(JEI)の点字データ保管庫へ収録しています。リンク先は、その説明文になります。
いままでの特集記事は、こちら
北海道エスペラント大会
HELのメインとなる大会の紹介です。
北海道エスペラント連盟機関誌 「Heroldo de HEL」 の目次 いくつかの記事はWeb化してます。
北海道エスペラント連盟規約
当連盟の歴史
明治時代から現在までの北海道のエスペラントとHELの歴史を簡潔にまとめてます。
苫小牧エスペラント会例会
札幌エスペラント会通信
札幌エスペラント会の紹介
エスペラント翻訳サービス
北海道内のエスペラント会
道内のロンドでリンクご希望の方は、下記連絡先へ
北海道内のエスペラントサイト
道内のエスペラント・サイトでリンクご希望の方は、下記連絡先へ
アイヌ神謡集
当連盟で出版した「アイヌ神謡集エスペラント訳」の電子版です。
Pri la Aina Lingvo per Esperanto (KIRIKAE Hideo)
1996年にチェコで開かれた第81回世界エスペラント大会で「プラハ宣言」が採択されました。エスペラント(語)使用者は、「民族内では自らの言語で、民族間・国際間には国際語エスペラントで」という
- 多言語主義 - を支持していますが、その立場を明らかにしたものです。
プラハ宣言(アイヌ語)
プラハ宣言(沖縄語)
プラハ宣言(エスペラント) プラハ宣言(英語)
プラハ宣言(日本語)
投稿記事 基本的には当連盟員のエスペラントの記事を掲載します。北海道に関わりがあれば、連盟員でなくとも記載を検討します。
ご希望の方は、電子メールでご投稿願います。
行事予定 HEL機関誌から、ピックアップします。
過去の記事
第99回日本エスペラント大会(2012年)- 札幌市 (終了報告)
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