アイヌ語と同一起源の言語は見つかっていない。 日本語と特に系統的な関係はない。 言語構造はアルタイ語群のものに似ているが、 非アルタイ語的な特徴をいくつか持っている。 アプリカティブの接頭辞(補充接頭辞)といわれる e-, ko-, o- は非アルタイの例である (4参照)。 また、アイヌ語の抱合語的性質もアルタイ語とは共通しない ( 3-2-2参照)。
アイヌは固有の文字はもっていない。 何人かのアイヌは自らの言葉を記述する努力をし、そのためにラテン文字、キリル文字、仮名を使用した。しかし、現在ではカナだけが使われている。
アイヌ語をある程度のレベルで流暢に話せるアイヌの数は たいへん限られている。 現在では9名(1979年)の優れた話者が知られているだけである。
アイヌは豊かな口承の伝統をもっている。 非常に多くの韻文の物語が世界文学の中に永久に残るであろう。 韻文の朗唱のときには、口語文体(会話)とは異なる文体が使われる。 より複雑な形態が詩句の文体の際だった特徴である。
物語の中では、英雄や神が自分の経験を(一人称で)話す。 アイヌ語学の偉大な先駆者、金田一京助博士はアイヌの口承を 「一人称説話体(一人称の説述体)」と名付け、このことをアイヌ口承文芸の 特徴的な性格であると考えた。
民族の尊厳を取り戻すアイヌの運動は少しずつ活気を帯びてきている。 同時にアイヌ語とその文化を保存する、アイヌとアイヌ学者の努力も続いている。
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