3. 簡単なアイヌ語文法


3-2. 動詞句


3-2-1. さまざまな動詞句


次のような動詞句の型が存在する。
[一項動詞]
mina 「~は笑う」
[二項動詞]
kik 「~は~をたたく」
[動詞] + [助動詞]
paje a 「~(複数)はもう行った」

など。

いくつかの一項動詞は複数形を持つ。as「私」という人称接語がそのような動詞に付くと、意味の上で単数にもかかわらず、複数形となる。


3-2-2. 派生動詞と合成動詞


ばらばらにすると動詞としての機能を失うような形を, [動詞語基]という。 動詞語基は自動詞的、または他動詞的のどちらかである。 自動詞語基は、単独では一項動詞となる。 他動詞語基は単独では二項動詞となる。 動詞語基は、さまざまな接辞、名詞や他の動詞語基が付けられて、 派生動詞や、合成動詞になる。 付加された動詞語基は合成された動詞のなかで副詞として働く。 (単語集のcxi-sana-san-keを参照。) 次の例はアイヌ語の豊かな派生語と動詞形成を示唆する。

自動詞語基 raj
一項動詞 raj 「~は死ぬ」
二項動詞 raj-ke 「~は~を殺す」
三項動詞 e-rajke 「~は~を~で殺す」
一項動詞 jaj-rajke 「~は自殺をする」
二項動詞 e-jajrajke 「~は~で自殺をする」
自動詞語基 an
一項動詞 an 「~がある」
一項動詞 hauxe-an 「~が話す」
(直訳では「~の声がある」)
他動詞語基 nu
二項動詞 nu 「~が~を聞く」
三項動詞 nu-re 「~が~に~を聞かせる」
一項動詞 i-nu 「~が聴取する」
二項動詞 inu-re 「~が~に聴取させる」

動詞の機能を欠いた形は、接尾辞の助けにより動詞語基となることがある。 それらの形のなかで、子音+母音+子音という音節からなり、 擬音語の性格を持つものを、私は仮に「kvk語根」と呼ぶことにする。


訳注:「kvk」はエスペラントでの子音(konsonanto)と母音(vokalo)の 頭文字をとったものです。
kvk語根 tok- (擬音語)「ボキッ」
一項動詞 tok-kosanu 「~は「ボキッ」と音がする」
kvk語根 saux- (擬音語)「ザワ」「ユラリ」
二項動詞 saux-a 「~は~をゆさぶる」

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