第62回大会決議集2

北海道エスペラント連盟総会決議書

REZOLUCIO de HEL

Al Esperanta pagxo

現第62回北海道エスペラント大会

北海道エスペラント連盟総会決議書

決議書２ 99年度事業

一人一人の個性･趣味･条件を生かして新たな仲間作りと新たな学習会を

１．情勢

人権としての言語権とエスペラント運動

1996年の「国際語エスペラント運動に関するプラハ宣言」の発表以来、言語の多様性の擁護と言葉の権利についての議論や取りくみがエスペランチストの間で目立つようになってきました。今年になって、日本エスペラント学会は世界人権宣言賛同表明署名に取りくんでいます。その「署名ご協力のお願い」の中で、以下のように言語権とエスペランチストの課題について述べています。

「言語問題はまさに基本的人権に関わる問題です。『すべての人は［･･･］言語［･･･］による差別を受けることなく』という（世界人権宣言の）第2条の内容を実現するのは、エスペランチストである私たちの課題であると言えるでしょう。」

　ここ北海道でも、権利としてアイヌ語学習をとらえるアイヌの人々が増えてきました。エスペランチストがアイヌ語を学習したり、アイヌ語復権の運動に参加したりしています。

　以前に比べれば、一般の人が英語以外の言語を学習する機会を得る事が容易になってきています。空港や港町でロシア語、韓国語、中国語などの案内や看板を見かけるようになりました。「英語をしゃべれれば立派な国際人」という素朴で頑強な常識は、現実の国際交流とりわけ庶民同士の交流をつうじて少しずつ崩れはじめています。私たちを取り巻くこうした言語の多様化の流れの中で、北海道のエスペランチストが人権として言語をとらえ、エスペラントの魅力を大胆に訴えることの可能性が広がりつつあります。

理想主義・人類人主義の復権

冷戦体制の終了直後、世界は新しい秩序のもと平和と経済的繁栄をめざしグローバルな社会になるかのように宣伝されました。その後の10年は、解決のめどがたたない地球規模での環境破壊、貧富の差の拡大とそれにもとづく絶える事のない地域紛争、民族･宗教対立など、紛争と経済混乱の10年でした。日本の10代20代の若者たちの多くは、そしておそらく多くの他の国々の青年たちも、自分達や自分の次の世代の生活が向上していくとは考えなくなっています。冷戦時代には総じて、体制側であれ反体制であれ、政治的無関心層にですら人生の意味や目標、理想がイメージされていました。極論すれば、いま私たちは、自分よりも弱い者、見劣りのする者をみつけて仲間はずれにしていじめるか、逆にボランティアとして助けてみせることによって、なんとか自分の存在を確認しているのです。

目標と理想の喪失は、青年をはじめ社会のもっとも敏感な部分にはっきりと新たな傾向を生み出しています。宗教への関心の高まり、学校で教えられたのとは違う歴史認識への興味など、若者は安らぎと理想、人生の目標をもとめて模索しているのです。そしてそのこと自体は、私たちの経験や価値観からみて良い事であったり忌まわしいことであったりしているのです。

9月5日の毎日新聞の報道によれば、カンボジアでメチルアルコール入りの酒が大量に出回り、44人が死亡し100人以上が病院で手当てを受けました。この際ベトナム人が犯人とのうわさが広がり、長年のカンボジア人の反ベトナム感情に火が付き、すでに5人のプノンペン在住のベトナム人が虐殺されています。似たような民族対立や虐殺はアジアやアフリカだけではなく、ヨーロッパやアメリカでも起きており、日本でも根強い外国人への差別や偏見があります。

人々が目標や理想を失ったとき、不満のはけ口として他民族の攻撃に走る。まさに19世紀のポーランドで青年ザメンホフが直面し心を痛めた状況が、冷戦後の私たちに再び再現されようとしています。そして私たち一人一人はこうした大状況の中であまりにも無力です。しかしザメンホフの当時と今とを比較するとき、少なくとも一つだけは重大な違いを指摘できます。それはたったひとりのエスペランチストではなく、世界中に広がった百万のエスペランチストとそのネットワークの存在です。いまこそ私たち一人一人の内に眠っているザメンホフを目覚めさせ、目標と理想を失いかけている世界に私たちの理想を語りかけていこうではありませんか。静かに力強く、そして人々の声にやさしく耳を傾けながら。

２．二十一世紀への展望を実現するための組織･宣伝活動

北海道各地での運動の発展や組織の維持と拡大を目指していくために、北海道エスペラント連盟の現在の規模と体制・予算では、専従員や特別な担当者を配置したり長期派遣したりという方法を採用する事はできません。どうしても、有能で魅力的なエスペランチストの来道を機会としたり、地域で運動の核となる熱心なエスペランチストかエスペラント学習希望者があらわれるよう魅力ある企画や宣伝をおこなってみたり、孤立したエスペランチストを結びつけて仲間を作っていけるよう企画をたてたり機会を作るなど、必ずしも結果を予測できない様々な試みを行い、偶然の機会をうまくとらえ、それでも失敗をくりかえしながら、運動の発展を模索していくしかありません。

セルゲイアニケーエフ氏の函館赴任とやる気のある連盟委員の存在がなければ、いくら連盟で合宿を開催しても97年度函館サークルの再結成にはつながらなかったでしょう。ゲルダデレクさんが北海道旅行の際、アイヌの山道さんのお宅に民泊していなければ、第61回北海道大会へのアイヌの人々の賛同や参加は得られなかったでしょう。ミコスローパー氏が札幌に長期滞在しなければ、札幌の学生や青年たちがあれほどエスペラントのたまりばに集まったでしょうか。小樽にもしセルゲイさんと息子さんが来る事ができなければ5月小樽合宿はあそこまで魅力的なものになったでしょうか。

エスペラント宣伝の機会をとらえて機敏に魅力的な企画をたて交流･学習の場をつくる。熱心な人をみつけ、集まった人々に合った学習教材をただちに準備し、地道な学習活動や仲間作りを支援する。活動がマンネリにならないよう他のグループとの交流や国際交流の機会をつくる。失敗の経験は次の機会にいかして新たな工夫を行う。この間の経験は、このように機動的で系統的な活動が必要なことをしめしています。

全体状況はエスペラント運動の新たな発展の可能性を高めているにもかかわらず、500万道民7万8千平方キロメートルの広大な大地に、私たちが投入できる労力と資金はごく限られたものでしかありません。当面、この限られた力を知恵を絞って機動的に使っていかなければ、21世紀への展望は机上の空論となる可能性が高いのです。

一方当然のことながら、機動性柔軟性だけでは計画はなりたちません。結成されて日の浅いサークル･学習グループ、活動を停止しはじめたグループにはそれぞれの実情にあった計画をたて、いくつかの企画や案を持って、連盟による系統的で継続的な支援が必要です。

こうして、機動性と計画性のバランスの上で活動を行う事によって、「21世紀を10以上のサークル･学習グループ、100名以上の連盟員、500名以上の支持者で迎える」という目標は達成されるのです。今年度は、98年度の一定の成果を評価したうえで、機動性の維持とともに計画性を高め、連盟資産取り崩しによる最高5万円の予算をもって21世紀への展望を実現する組織･宣伝活動をすすめます。

３．宣伝･広報

連盟のインターネットホームページの内容を充実し、リンク先も増やします。また、連盟の機関誌や他のエスペラント誌にホームページのアドレスを掲載し、より多くの人のアクセスとホームページへの意見を求めます。

宣伝用パンフ･宣伝用グッズは事務局に一定数を常備しサークルや連盟員の宣伝活動に応え、必要があれば迅速な発注や作成を行います。

エスペラントについての解説や北海道のエスペラント運動の状況をまとめたものは、連盟のインターネットホームページかパンフレット、あるいは双方で発表することを目指し、各サークルや連盟員が使用できるように努力します。

マスコミの有効な利用を引き続き目指しますが、新聞折り込み、支持者への郵送案内、公民館や各種市民集会でのビラ配布などを行っていきます。

４．組織

引き続き、組織拡大の努力を行い、元連盟員、エスペラント学習者、エスペラント支持者などに連盟の活動を伝え、加盟を訴えていきます。

各サークルの活動を機関誌、インターネットで伝え、当該サークル員以外の人々も各サークルの活動に参加しやすくします。

21世紀への展望に基づく組織･宣伝活動は、魅力あるエスペランチストの来道や連盟員の要望そして連盟の行事開催などチャンスをとらえて、事務局を中心に機敏な対応を行います。また、結成から日の浅いサークル･学習グループや活動が停止しはじめたサークルへの対策と援助を系統的に行っていきます。委員会は連盟全体の活動とバランスを考えながら事務局への援助、指導を行っていきます。

連盟委員会は引き続き定期的に隔月で開催し、必要に応じて臨時に開催します。開催地は主として札幌になりますが、できるだけ他の地域での開催の可能性を追求します。事務局会議は少なくとも月１回開催し、さらに適宜必要に応じて会議を持ちます。当面事務局の会議は札幌で行います。

委員会の札幌での会議場所、事務局事務所として

　　ロンデタージョ（札幌市北区麻生町1-3-13 TEL/FAX 011-717-4189）

を1999年度1年間は無料で使う了解も得ています。ここは

　　図書部販売用図書展示販売所、機関誌部機関誌印刷発送作業にも利用しています。

　　（ロンデタージョは印刷費のみ有料です）

５．学習

新年講習会、5月合宿、次回北海道エスペラント大会一般向け入門講習会を連盟主催で行います。講師は北海道内外の外国人エスペランチストの協力もあおぎ、多彩で魅力的な講習会にします。エスペラントで遊ぶ企画は改良を加えながら、北海道式遊びながら勉強法の確立を目指します。エスペラントでのディベートは可能であれば再度試みます。

日本エスペラント学会の検定試験を今年度も北海道で行います。また、これまでの検定試験合格者の名簿作成を開始し、講師認定制度の活用を目指します。

各サークルの学習活動にできるだけの援助を行います。また、特に札幌圏では札幌エスペラント会の三つの学習グループやテーマを決めての1日学習会、サート(SAT)札幌のエスペラントによる討論、青年学生たちのネットワークと集まりなど、多彩な学習･交流がそれぞれ行われています。これらの学習活動の内容を広く知らせあうことによって、自分に最もあった学習の場を得られるよう、連盟も協力します。その中で新しい学習グループの形成や交流にも発展するようにします。

国内外での国際的で本格的なエスペラント合宿･講座へ連盟員が参加できるよう必要な手助けをします。

学習活動は地道な努力を必要としますが、それをささえる仲間作り、夢や希望、具体的な目標を連盟員ひとりひとりが持てるようにすることが大切です。旅行や読書、様々な形での国際通信、社会活動などの活動を広めます。連盟は、エスペラントの学習とエスペラントを実際に活用することが、学習のなるべく早い段階から結びつくよう努力します。

６．財政

21世紀への展望を実現するための組織･宣伝費は連盟資産の取り崩しで支出します。図書費については在庫図書の販売に力をいれることによって黒字を目指します。

上記の二項目を除いて、収支バランスのとれた財政を行う事を基本とします。同時に不測の事態に対応できるようにします。

連盟の行事は原則として独立採算で開催することを目指します。

会費徴収は請求書の送付を機関誌発送と共に行うなどして、3月末日までに行うように努力します。

連盟への加盟をできるだけ多くの人々に訴えていきます。また会員名簿の整備と会計事務の迅速化が実現したので、新規加盟者は会費納入月よりの加盟として、次年度から会費切れのまえにそれぞれ会費の請求をいたします。

連盟の活動にブレーキをかけないようにしながら、経費削減の努力をしていきます。

７．機関誌

連盟機関誌｢ヘロルドデヘル」の隔月定期発行を維持し、多彩な記事と執筆者を得るようにします。毎号20ページ建てを維持できるよう、計画的編集に心がけます。

機関誌に写真やイラストをいれ、楽しいものにすると同時に、誤植を極力少なくするための努力をします。記事の標題は、できるだけエスペラント及び日本語の二言語にします。

機関誌発送は、連盟員、執筆者や記事関連者、日本エスペラント学会、他連盟、機関誌交換組織、必要と思われるエスペラント支持者、若干のマスコミや公共機関･財団などに行います。

会計担当委員と協力して、新規加盟者にはただちに機関誌の発送を開始し、また会費未納者には、機関誌発送の際に会費請求書を同封します。1年以上会費未納の方には電話などで本人の意思確認をし、連絡先不明の場合や連盟脱退を希望する方には機関誌の発送を停止します。

８．図書･出版

ロンデタージョで図書の常設展示販売を行い、出張販売も機会あるごとに行います。財政の苦しいサークルや企画での出張販売では、場合によってサークルや実行委員会に販売利益を還元します。

日本エスペラント学会より書店として扱ってもらうよう取り計らい、販売確実な図書類はより利幅の大きい書店卸値で購入し、その他は、従来通り委託販売制度を活用して仕入れることのできるよう、日本エスペラント学会と交渉します。また、関西エスペラント連盟発行の書籍に関して、卸値の交渉を行いより低価格で仕入れが可能な場合は直接取り引きを行います。

99年度は、在庫図書の販売に力を入れ黒字決算を目指します。

新たな学習会やエスペラント学習希望者が予測される場合は、辞書や入門テキストを迅速に準備します。

在庫図書リストは、常に更新し希望者に実費で郵送します。可能であればインターネットホームページにリストを掲載し、注文に応じられるようにします。

９．渉外･国際活動

連盟は、日本エスペラント学会、関西エスペラント連盟ほか国内他連盟、日本青年エスペラント連絡会など国内のエスペラント組織･エスペランチストたちとの連絡･協力を強めていきます。

連盟は、世界エスペラント協会、ウラジオストックエスペラントクラブなど海外のエスペラント組織･エスペランチストたちとの連絡･協力を強めるよう努力していきます。

連盟員のエスペラントでの文通、ｅメール通信を盛んにし、また内外の雑誌への投稿やエスペラント文学作品の発表を促します。

連盟員の世界大会や国際的集まり、海外でのエスペラント講習会などへの参加を励まし、必要な手助けを行います。また日本大会や国内の様々な企画、合宿講習会への参加を励ましていきます。

道内にエスペランチスト民泊ネットワーク（パスポルタセルボ）をいっそう整備し、各サークル･連盟員の協力を得ながら、道外エスペランチストの受入・交流を活発にしていきます。

１０．運動活性化プロジェクトチーム

なるべく多くの機会をとらえ、道内各地で会合を持ち、現在の活動でうまくいっていないと感じることや今すぐできる改善策から夢のような企画まで、自由な発想と討論を大切にしていきます。

文書による提案も積極的に受け付けていきます。

１１．人権としての言語権の確立をめざす社会活動

北海道エスペラント連盟は、世界エスペラント協会、日本エスペラント学会などのすすめる、世界人権宣言への賛同、言語権を人権として広く認識してもらい具体的な課題を明らかにする活動を支持し、協力していきます。

連盟はプラハ宣言のアイヌ語訳完成のために努力していきます。

連盟は、「アイヌ語地名を大切に！」市民ネットワークにオブザーバーとして参加し、様々な分野での連盟員による言語権のための活動を励ましていきます。

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