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13 沼貝が自ら歌った謡M1) 、「トヌペカ ランラン」
(ピパ ヤイェユカラ 、「トヌペカ ランラン」)
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アイヌ語の原文 (原文の言語構造を反映する ために書き改めた) |
日本語訳 (原本) |
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tonupeka ranran sat sikus an uxa ot ta okaj as i ka sat uxa okere, tane anakne raj as kuski "nen ka ta usa uxakka un kure un temka okaj! uxakkapo!" ohaj cxi rajkotenke, okaj as uxa, too hosasi sine menoko saranip se kane arki kor okaj. cxs as kor okaj as a uxa un sama kus un nukar a uxa, "toj pipa uxen pipa, nep tap cxiskar hawe iramsitnere okaj pe ne ya ?" itak kane un otetterke un ureetursere un sejkojaku, toop ekimun paje uxa isam. |
1 トヌペカ ランランM2) 2 強烈な日光に私のいる所も 2 3 乾いてしまって今にも私は死にそうです。 3 3 4 「誰か、水を飲ませて下すって 4 5 助けて下さればいい。水よ水よ」と私が泣き叫んで 5 5 5 6 いますと、ずーっと浜の方から一人の女が 6 6 7 籠を背負って来ています。 7 8 私たちが泣いていますと、私たちの傍を通り 8 8 9 私たちを見ると、 10 「おかしな沼貝、悪い沼貝、何を泣いて 10 10 10 11 うるさい事さわいでいるのだろう。」と言って 11 11 12 私たちを踏みつけ、足先にかけ飛ばし、貝殻と共につぶして 12 12 13 ずーっと山の方へ行ってしまいました。 13 |
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"ajapo, ojojo! wakkapo!" ohaj cxi rajkotenke okaj as uxa, too hosasi suj sine menoko saranip se kane arki kor okaj. "nen ka ta usa uxakka un kure un temka okaj! ajapo, ojojo! uxakkapo!" ohaj cxi rajkotenke, okaj as a uxa pon menoko kamuj siri ne un sam ta arki un nukat ciki, "inunukaski sir sesek uxa pipa utar sotkihi ka sat uxa okere, uxakka ewen hauxe nesun okaj ne, nekon a ne p okaj reuxe tan, a otetterke apkor okaj." itak kane un opitta un umomare, korham oro un omare, pirka to oro un omare. pirka nam uxakka cxi ejajtemka, sino tumasnu as. ot ta easir nea menokutar sinricxihi cxi hunara inkar as a wa, hoskino ek un ureejaku sirun menoko wen menoko anak samajunkur kot turesi ne wa, un erampokiuxen un siknure pon menoko kamuj mojre mat anak okikirmuj kot turesi ne aux an. samajunkur kot turesi cxi epokpa kusu kor amam toj cxi sumka uxa, okikirmuj kot turesi kor amam toj cxi pirkare ne paha ta okikirmuj kot turesi sino haru kar. cxi renkajne ene sirki i eraman uxa, pipa kap ari amam pus tuje. oro uxano kespa an ko ajnu menokutar amam pus tuje ko pipa kap eiuxanke ruuxe ne ari sine pipa jajejukar. |
14 「おお痛、苦しい、水よ水よ。」と泣き叫んで 14 14 14 15 いると、ずっと浜の方からまた一人の女が 15 15 16 籠を背負って来ています。私たちは 16 17 「誰か私たちに水を飲ませて助けて下さるといい、 17 17 18 「おお痛、おお苦しい、水よ水よ。」と叫び泣きました。 18 18 18 19 すると、娘さんは、神の様な美しい気高い様子で 19 19 20 私の側へ来て私たちを見ると、 20 21 「まあかわいそうに、大へん暑くて沼貝たちの 21 21 22 寝床も乾いてしまって水を欲しがって 22 22 23 いるのだね、どうしたのでしょう 23 23 24 何だか踏みつけられでもした様だが......」と言いつつ 24 24 25 私たちみんなを拾い集めて蕗(ふき)の葉に 25 25 26 入れて、きれいな湖に入れてくれました。 26 26 27 清い冷水ですっかり元気を恢復(かいふく)し 27 28 大へん丈夫になりました。そこで始めて 28 29 かの女たちの気性を探って 29 29 30 見ると、先に来て、私を踏みつぶした 30 30 31 にくらしい女、わるい女はサマユンクルの 31 31 32 妹で、私たちを憫(あわれ)み 32 33 助けて下さった若い娘さん淑(しと)やかな方 33 33 34 は、オキキリムイの妹なのでありました。 34 34 35 サマユンクルの妹は悪(にく)らしいので 35 35 36 その粟(あわ)畑を枯らしてしまい、オキキルムイの 36 36 37 妹のその粟畑をばよく実らせました。 37 37 38 その年に、オキキルムイの妹は大そう多く収穫をしました。 38 38 38 39 私の故為(せい)でそうなった事を知って 39 39 40 沼貝の殻で粟の穂を摘みました。M3) 40 41 それから、毎年、人間の女たちは 41 41 42 粟の穂を摘む時は沼貝の殻を使う様になったのです。 42 43 と、一つの沼貝が物語りました。 |
備考: M1) 題名: 幌別で伝承されているユーカラ M2) 1行目: これは、このユーカラの折り返し(サケヘ)である。 M3) 40行目: 原文では、"pipakap" (=真珠貝)。 これを、アイヌは、いつも、粟の穂を摘むのに用いていた。 |
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