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12 獺(かわうそ)が自ら歌った謡、「カッパ レウレウ カッパ」M1)
(エサマン ヤイェユカラ、「カッパ レウレウ カッパ」)
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アイヌ語の原文 (原文の言語構造を反映する ために書き改めた) |
日本語訳 (原本) |
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Kappa reux reux kappa sine an to ta pet esoro sinot as kor ma as uxa sap as ki uxa, samajunkur kor uxakkataru putuhu ta sap as a uxa, samajunkur kor turesi kamuj siri ne oattekkor niatus ani oattekkor kina tantuka anpa kane ek kor an uxa kusu pet parurke ta cxi sapaha patek cxi etukka, "ona e kor a? unu e kor a?" itak as a uxa pon menoko homatu ruj pe sikkankari un nukar a uxa kor uxen puri enan tujka eparsere, "toj sapakaptek, uxen sapakaptek, iokapuspa, nimakitara utar, cxo cxo...." |
1 カッパ レウレウ カッパ 2 ある日に、流れに沿って遊びながら 2 2 3 泳いで下りサマユンクルの 3 3 4 水汲路のところに来ると、 4 4 5 サマユンクルの妹が神の様な美しい容子で 5 5 6 片手に手桶を持ち片手に 6 6 7 蒲の束を持って来ているのでJ1) M2) 7 7 8 川の縁に私は頭だけ出し、 8 8 9 「お父様をお持ちですか? 10 お母様をお持ちですか?」と云うと、 10 11 娘さんは驚いて眼をきょうろきょろさせ 11 11 12 私を見つけると、怒の色を顔に 12 12 13 現して、 14 「まあ、にくらしい扁平頭、悪い扁平頭が 14 15 人をばかにして。 J2) M3)犬たちよ、ココ......」J3) M4) 15 15 |
16 16 17 17 17 18 18 18 19 19 20 21 21 21 22 22 22 23 23 23 24 24 24 25 25 25 26 26 26 27 28 28 29 29 29 30 30 30 31 32 32 33 33 33 34 34 34 35 35 35 36 36 36 37 37 38 38 38 39 39 39 40 40 41 41 41 42 42 42 43 43 44 44 44 45 45 45 46 47 47 48 48 48 49 49 49 50 50 50 |
ari hauxean a uxa poro nimakitara utar usaokuta, un nukar a uxa notsep humi tauxnatara. cxi ehomatu, pet asama cxi korauxosma, nani petasam peka kira as uxa sap as. sap as a ine okikirmuj kor uxakkataru putuhu ta cxi sapaha petek cxi etukka, inkar as a uxa okikirmuj kot turesi kamuj siri ne oattekkor niatus ani oattekkor kina tantuka anpa kane ek uxa kusu itak as hauxe ene okaj:-- "Ona e kor a? unu e kor a?" itak as a uxa pon menoko homatu ruj pe sikkankari un nukar a uxa kor uxen puri enan tujkasi eparsere, "toj sapakaptek uxen sapakaptek iokapuspa, nimakitara utar, cxo cxo...." itak a uxa poro nimakitara utar cxisaokuta. sirki cxiki esir an pe cxi esikarun, cxi emina rusuj kor pet asama cxi korauxosma kira as kusu ikicxi as a uxa, senne ka suj nimakitara utar ikicxi kuni cxi ramu a i notsep humi tauxnatara, petasam pakno un kotetterke ja oro un ekatta, cxi sapaha cxi netopake a pukpuk a risparispa ki a ine no nekon a ne ja cxi eramiskare. hunak pake ta jajsikarun as inkar as a uxa, poro esaman asurpe utut ta rok as kane okaj as. samajunkur ka okikirmuj ka ona ka sak unu ka sak reuxe cxi eraman uxa ene an irara cxi ki kusu a un panakte, okikirmuj kor seta utar oro uxa a un rajke, |
16 と言うと、大きな犬どもが 16 17 駆け出して来て、私を見ると牙を鳴ら 17 17 18 している。私はビックリして川の底へ 18 18 19 潜り込んで直ぐそのまま川底を通って 19 20 逃げ下った。 21 そうして、オキキリムイの水汲路の 21 21 22 川口へ頭だけだして 22 22 23 見ると、オキキリムイの妹が 23 23 24 神の様に美しい様子で片手に手桶を持ち 24 24 25 片手に蒲の束を持って 25 25 26 来たので私のいうことには、 26 26 27 「御父様をお持ちですか? 28 御母様をお持ちですか?」というと、 28 29 娘さんは驚いて眼をきょろきょろさせ 29 29 30 私を見ると、怒りの色を顔に 30 30 31 表して、 32 「まあ、にくらしい扁平頭、悪い扁平頭が 32 33 人をばかにして。犬たちよ、ココ......」 33 33 34 と言うと、大きな犬どもが駆け出して来た。J3) M4) 34 34 35 それを見て私は先刻の事を思い出し 35 35 36 可笑しく思いながら川の底へ 36 36 37 潜りこんで逃げようとしたら、 37 38 まさか犬たちがそんな事をしようとは 38 38 39 思わなかったのに、牙を鳴らしながら 39 39 40 川の底まで私に飛び付き 40 41 陸へ私を引き摺り上げ、私の頭も私の体も 41 41 42 噛みつかれ噛みむしられて、しまいに 42 42 43 どうなったかわからなくなってしまった。 43 44 ふと気が付い見ると、 44 44 45 大きな獺(かわうそ)の耳と耳の間に私はすわって 45 45 46 いた。 47 サマユンクルもオキキリムイも 47 48 父もなく母もないのを私は知って 48 48 49 あんな悪戯をしたので罰を当てられ 49 49 50 オキキリムイの犬どもに殺され 50 50 |
51 51 51 51 52 52 52 53 |
toj raj uxen raj cxi ki siri tap an. teuxano okaj esaman utar itekki irara jan. ari esaman jajejukar. |
51 つまらない死方、悪い死方をするのです。 51 51 51 52 これからの獺(かわうそ)たちよ、決して悪戯をしなさるな。 52 52 53 と、獺(かわうそ)が物語った。 |
備考 M1) 題名:幌別で伝承されているユーカラ。この詩句には、折り返し句 「カッパ レウレウ カッパ(=扁平頭、止まれ、止まれ、扁平頭)」があります。 J1) = M2) 7行目:アイヌは、蒲の乾いた葉で敷物を編みます。 それを編む前に水にちょっと浸してさらに編みやすくします。それで、若い娘は水汲み場へ蒲の束を運んでいきます。 J2) = M3) 15行目:原義は、 "i-okapusxpa(~が、過去を暴く)"。死んだ親類や両親などの人について話すことは、大変無作法な行為です。 それで、 若い娘は、川獺に腹を立てています。 誰かの秘密を暴いたり、公然と話すことも、 "i-okapusxpa"と言います。 J3) = M4) 15行目:原義は、 "nimakitarautar" (=牙をむきだしている)。これは、犬を意味します。猟に際しては、アイヌは犬を連れていきます。山のけものは、牙を使った犬の情け容赦ない攻撃を最も恐れます。 |
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